高校サッカー選手の鼠径部痛を防ぐ! ― クロスモーションスイング運動の効果

Groin pain
出典:Mori H, et al. Preventive Effect of Cross-motion Swing Exercise on Groin Pain in High School Male Soccer Players: A Cluster Randomized Controlled Trial. Orthop J Sports Med. 2025;13(7). doi:10.1177/23259671251351333 (CC BY-NC-ND 4.0)

サッカー選手に多い「鼠径部痛」とは?

サッカーをやっていると、股関節の付け根(鼠径部) に痛みを感じる選手は少なくありません。
実は、プロ選手のケガの 12~18% が鼠径部痛に関係していると言われています。

鼠径部痛に関してはこちらの記事でも解説しています。

原因の多くは「キック動作」や「急な方向転換」。
一度痛みが出てしまうと長期間の休養が必要になることもあり、選手にとって大きな問題です。

新しい予防法「クロスモーションスイング」とは?

これまでの予防トレーニングといえば、内転筋(足を閉じる筋肉)を鍛える「コペンハーゲンアダクション」が有名でした。
しかし、高校生年代では効果がはっきりしないという課題もありました。

そこで日本の研究チームが考案したのが、クロスモーションスイング(CMS) です。
これはキック動作を模倣しながら、肩・体幹・股関節を協調させて動かすエクササイズ。
1回2~3分でできる、シンプルな運動です。

Mori H, Niga S, Mizoguchi Y, Okubo Y, Hattori H, Hall T, Akasaka K. Preventive Effect of Cross-motion Swing Exercise on Groin Pain in High School Male Soccer Players: A Cluster Randomized Controlled Trial. Orthop J Sports Med. 2025 Jul 3;13(7):23259671251351333. doi: 10.1177/23259671251351333. PMID: 40620722; PMCID: PMC12227873.

研究の内容

  • 対象:高校男子サッカー選手135名
  • 期間:16週間
  • 方法:
    • 通常のウォームアップだけのチーム
    • 通常+CMSを取り入れたチーム

を比較しました。

結果はどうだった?

  • 鼠径部痛の発症率
    • CMSあり:9.4%
    • CMSなし:23.1%
      発症リスクが約70%減少!
  • 特に注目すべきは…
    キック動作による鼠径部痛がCMS群ではゼロ
    一方、CMSをやらなかったチームでは7件も発生していました。
  • 遵守率も85%以上と高く、現場で続けやすい運動であることもわかりました。

まとめ

この研究からわかることはシンプルです。
「サッカー特有の動きを模倣したウォームアップを取り入れることで、鼠径部痛を大幅に減らせる」 ということ。

特に成長期の高校生選手にとって、ケガを防ぎながらプレーを続けることはとても大切。
CMSは短時間でできて実用的な運動なので、これから多くのチームで導入される可能性があります。

北陸股関節外科医

富山、石川、福井の北陸で整形外科医をしており股関節を専門にしています。股関節鏡治療、人工関節治療を得意としています。学位取得後にイギリスに留学し最先端の股関節温存治療を学んできました。
・医学博士
・日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
・人工関節認定医

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