人工股関節の合併症 脱臼編②

人工股関節置換術

前回の記事では人工股関節の合併症の1つである脱臼についてお話しました。

脱臼については過剰におそれる心配はないことを説明しました。

しかし、それでも合併症はおこることがあり怖いのも事実であると思います。

なぜ合併症がこわいのか、それは起こった後にどうなるかを知らないからです。

そこで今回はもし脱臼してしまったら、その後どうなるのかについてお話いたします。

もし脱臼したら?

もし術後に脱臼したらどうなるのでしょうか

脱臼した場合、痛みで歩けなくなります

脱臼していても歩けたという人は聞いたことがありません。

つまり歩くのが困難なほど痛みが強いような場合は脱臼が考えられ、

また何とか歩けるといった場合はおそらくは脱臼していないと思います。

そのような強い痛みが生じた場合、躊躇せずに救急車をよびましょう

手術を受けた病院に連絡がつながる場合は連絡していただいても大丈夫だと思います。

脱臼していた場合、整形外科医が対応できる状態の病院に行く必要があります。

その判断は救急隊の方がよくわかっていますので、遠慮せず救急車を呼ぶ方がよいと思います。

病院についたら何をするの?

病院に着いたらまずレントゲンを撮影します。

レントゲンを撮影すればほぼ脱臼しているかどうかが分かります。

脱臼ではなく、骨折である可能性もあります。

レントゲンで脱臼が分かった場合は、すぐに整復(脱臼をもとにもどすこと)を行います。

整復は麻酔を使用して行います。

点滴による麻酔で眠っている間に、脱臼した脚をつよくひっぱって整復します。

もしこの麻酔で整復できない場合は、全身麻酔を行う必要があります。

外来で行う麻酔と全身麻酔との違いとして、気管挿管を行うかどうかという点があります。

全身麻酔を行った場合、筋肉を弛緩させるお薬を使うことができより簡単に整復が可能になります。

またひっぱっただけでは整復が難しい場合、手術した場所を再度あける必要があります。

どちらにせよ入院が必要になります。

装具をつくる

無事脱臼が整復できたあとはしばらく装具を使います。

外転装具と呼ばれるもので、これをしばらくの間装着することで脱臼を予防します。

関節がある程度かたくなってきて、脱臼のリスクが少なくなったと思われたときに装具を外します。

反復性脱臼、再手術

装具による治療を行っても脱臼がまたおこった、または画像検査にて脱臼をおこす原因が明らかであった場合

再手術を行う可能性があります。

再手術では、

  1. インプラントの設置角度を調整したり、
  2. 脱臼しにくいインプラントに変更したり、
  3. また筋肉が弱かったり、なかったりする方の場合は別の筋肉をもってくるといった処置を行うこともあります。

1.インプラントの位置を変えるなんで、最初の手術がまずかったのでは?

そうお思いになる方もいると思います。

人間の骨や関節の動かせる範囲は個人差が大きく、術前に脱臼が予想できないこともあります。

それが少しずつ分かってきたため近年脱臼率が低下しているのですが、それでも全ての人の脱臼を予測するのは困難です

2. 脱臼しにくいインプラントとは、Dual Mobility (デュアルモビリティ)と呼ばれるものや、拘束型カップと呼ばれるものです。

最初からそれを使えばいいのでは?とお思いになるのは当然ですが、

どちらもメリット、デメリットがあり、全員に最初から使うことはあまり推奨されません。

ここまで行う症例はかなりの難治症例であり、非常に稀です。

脱臼の原因についてよく検査し調べることが大事になります。

まとめ

人工股関節の脱臼について、脱臼したらどうなるのか?という点に焦点をあてお話させて頂きました。

最後まで読んで頂き大変ありがとうございました!

北陸股関節外科医

北陸の整形外科医であり股関節を専門にしています。股関節鏡治療、人工関節治療を得意としています。学位取得後にイギリスに留学し最先端の股関節温存治療を学んできました。
・医学博士
・日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
・人工関節認定医

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