靱帯を温存する股関節鏡手術の新たなアプローチとは?

FAI

股関節インピンジメント(FAI)は、若年から中年のアスリートや活動的な人々に多く見られる股関節の病気です。

これに対する代表的な手術が股関節鏡手術ですが、

従来の方法では関節の安定性に重要な役割を果たす腸骨大腿靱帯を損傷してしまうリスクがありました。

今回紹介するのは、日本の齊藤先生らが報告した「靱帯温存型スキップ・カプスロトミー(Skip Capsulotomy)」という新しい術式です。

Minimally Invasive Hip Arthroscopy for Femoroacetabular Impingement Using Iliofemoral Ligament-Preserving Skip Capsulotomy for Cam Resection. July 2025. Arthroscopy Techniques. DOI:10.1016/j.eats.2025.103769

2025年に発表されたこの方法は、股関節の安定性を保ちながら、より安全で回復の早い手術を可能にします。

私も現在はこの方法にて股関節鏡を行っています。


そもそも「カプスロトミー」とは?

カプスロトミーとは、関節包(関節を覆う袋状の組織)を切開して視野を確保する操作のことです。

従来の「インターポータルカプスロトミー」では、2つのポータル(手術器具を入れるための穴)をつなぐように関節包を大きく切開しますが、この際に腸骨大腿靱帯を損傷することがあります。


「スキップ・カプスロトミー」の特徴

この新しい術式では、以下のような工夫がされています:

  • 2つのポータルを“つながない”
    ・前外側ポータル(ALP)から約1.5〜2cmの横方向の切開
    ・中前方ポータル(MAP)に約5mmの縦方向の切開
    → これにより、腸骨大腿靱帯を避けながら、手術に必要な視野とスペースを確保できます。
  • 靱帯の機能を維持
    靱帯を切らないため、術後の関節の安定性を保てるほか、痛みや不安定感のリスクも軽減します。
  • 筋肉や神経へのダメージも少ない
    通常のカプスロトミーでは痛みを感じやすい領域も切るため、術後の痛みが出やすい傾向があります。スキップ法ではそのリスクも下げられます

術後のリハビリもスムーズ

  • 装具不要
  • 荷重や可動域の制限なし
  • 2ヶ月で運動リハビリ開始、3ヶ月でスポーツ復帰を目指します

メリットと注意点

メリット

  • 関節の安定性を損なわない
  • 痛みの原因となる神経へのダメージを回避
  • 早期回復が可能

注意点

  • 限られた視野での手術には技術的な習熟が必要
  • カムの取り残しリスクがあるため経験が重要
  • 長期的な臨床成績のデータはまだ不十分

まとめ

この「スキップ・カプスロトミー」は、患者さんの機能回復と術後の満足度を高める可能性を秘めた注目の技術です。

とくに靱帯の損傷を避けたい不安定な股関節の患者さんにとって、非常に有用な選択肢となるでしょう。

今後、さらなる研究や長期データが蓄積されることで、この術式の有効性がより明確になってくると期待されます。

北陸股関節外科医

富山、石川、福井の北陸で整形外科医をしており股関節を専門にしています。股関節鏡治療、人工関節治療を得意としています。学位取得後にイギリスに留学し最先端の股関節温存治療を学んできました。
・医学博士
・日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
・人工関節認定医

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