人工股関節置換術を受けたあと、仕事に戻れるのはいつ?

人工股関節置換術

以前「人工股関節置換術をした後にどのくらいでよくなるのか」についてお話いたしました。

今回は、どのくらいで仕事復帰できるかについて近年の論文をふまえてお話いたします。

復職に関する研究のまとめ

近年人工股関節置換術を受ける患者さんの年齢も幅広くなってきています。

また60代、70代でもバリバリと働かれている患者さんもたくさんいます。

人工股関節全置換術を受ける多くの患者さんにとって気になるのは

👉「手術のあと、いつ仕事に戻れるのか?」

という点です。

今回ご紹介する論文は、これまでの研究をまとめた システマティックレビューとメタ解析 で、「人工股関節置換術後の仕事復帰」に関する最新のエビデンスを示しています。

Soleimani M, Babagoli M, Baghdadi S, Mirghaderi P, Fallah Y, Sheikhvatan M, Shafiei SH. Return to work following primary total hip arthroplasty: a systematic review and meta-analysis. J Orthop Surg Res. 2023 Feb 12;18(1):95. doi: 10.1186/s13018-023-03578-y. PMID: 36782319; PMCID: PMC9926652.


研究の概要

  • 対象:初めて人工股関節全置換術を受けた成人
  • 調査内容
    • どのくらいの人が仕事に復帰できたか
    • 仕事に戻るまでの平均的な期間
    • 復職に影響する要因は何か

結果

1. 復職できる割合

  • 手術後、およそ70〜80%の患者さんが仕事に戻っている ことがわかりました。
  • 特に 手術直前まで働いていた方は復職率が高い 一方、すでに退職していた方では復帰が難しい傾向がありました。

2. 復職までの期間

  • 多くの方は 術後3か月前後で復帰 しています。
  • ただし仕事内容によって差があり、
    • デスクワークや軽作業 → 比較的早く復帰可能
    • 肉体労働や長時間の立ち仕事 → 復帰が遅くなる傾向

3. 復職に影響する因子

  • 年齢:若い方ほど復職率が高い
  • 仕事内容:身体的に負担の大きい仕事では復帰が遅れる
  • 合併症:術後に問題が起こると復職が遅れることがある

意味すること

この研究から、人工股関節置換術を受けた方の多くが 術後3か月以内に職場へ戻っている ことがわかりました。
もちろん、職種や体力、手術後の回復スピードによって差はありますが、目安としては「術後3か月」という数字を一つの参考にできるでしょう。

医療者にとっては、患者さんに復職の見通しを説明する際の根拠となり、またリハビリ計画を立てる際にも役立ちます。

当院ではどうか?

術後3か月程度というこの論文の結果を見て意外と長いなと私は感じました。

当院のリハビリスタッフが調査してくれた結果では、およそ

3週間~4週間で職場復帰している方が多かったとのことでした。

職場復帰期間は仕事内容によってかなりばらつきがあるようであり、肉体労働の方は少し時間がかかる傾向にあったようです。

この結果をふまえて最近私は患者さんに対して、およそ1か月~3カ月程度で職場復帰できますが仕事内容によってかわります、と説明しています。


まとめ

  • 一次性人工股関節全置換術後の復職率は 約70〜80%
  • 平均的な復職時期は 1か月~3か月前後
  • 職種や年齢によって復職スピードは異なる

北陸股関節外科医

富山、石川、福井の北陸で整形外科医をしており股関節を専門にしています。股関節鏡治療、人工関節治療を得意としています。学位取得後にイギリスに留学し最先端の股関節温存治療を学んできました。
・医学博士
・日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
・人工関節認定医

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