
以前お話ししましたFemoroacetabular Impingementという病気の診断方法についてさらに詳しくお話します。今回は画像診断です。
レントゲン
基本的にはまず2方向レントゲンを撮影します。身体所見などからFAIが疑わしい場合は45° Dunn Viewを追加しています。
FAIの診断ですが、日本股関節学会FAIワーキンググループから診断指針が出ていますので基本的にはそちらを参考にしながら診断をしています。
画像所見において注意すべきこととして
- Pincer typeにおけるcross-over signは偽陽性が多いこと、retroversionはCTにて評価する必要があること
Cam typeインピンジメントの評価は45°または90°Dunn viewにて評価するほうがよいこと
Ekhtiari S, Fairhurst O, Mainwaring L, Khanduja V. The Alpha Angle. J Bone Joint Surg Am. 2024 Oct 16;106(20):1910-1921. doi: 10.2106/JBJS.23.01089. Epub 2024 Sep 16. PMID: 39283954; PMCID: PMC11593979.
近年ではalpha angle 55°ではなく60度をカットオフとしている論文が多い
van Klij P, Reiman MP, Waarsing JH, Reijman M, Bramer WM, Verhaar JAN, Agricola R. Classifying Cam Morphology by the Alpha Angle: A Systematic Review on Threshold Values. Orthop J Sports Med. 2020 Aug 10;8(8):2325967120938312. doi: 10.1177/2325967120938312. PMID: 32844100; PMCID: PMC7418265.
が挙げられます。通常の股関節2方向レントゲンではCAMに気づかないことが多いので注意が必要です。
MRI
その後の外来フォローにて痛みに応じてMRIの撮影を相談します。
他院にてMRIを撮影されている方でも、病変が分かりにくいようなら基本的にはMRIを撮影し直して頂いています。
私のいる施設では1.5または3TのMRIがあり、通常は3TのMRIを撮影しています。
通常の撮影routineの他に、股関節唇の放射状撮影とProton Density Fat Saturated Sequenceを追加しています。
CT
そして、痛みが続いており手術加療を考慮するような方の場合はCTを必ず撮影しています。CTでは変形性股関節症との鑑別や、大腿骨や骨盤の前捻角の異常に注目しています。
変形性股関節症との鑑別というと簡単なように思われる方もいるかもしれません。
しかし、手術加療を行う上で、人工股関節を勧めるか股関節鏡を勧めるかの重大な選択を迫られることになるため私はかなり慎重に診断しています。
特にFAIと診断された方のCTを撮影すると、後方の関節裂隙が狭くなっており変形性股関節症が進行していることがよくあります。
そのような方には年齢と本人の希望を聞きながら人工股関節も考慮する必要があります。この変形性股関節症とFAIの境目は非常にあいまいであり難しいところであると思います。
私はどちらの治療も行っているためこの診断が非常に面白くもあるところです。
除外項目
特にFAIと変形性股関節症の鑑別や、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症などの疾患は必ず鑑別が必要です。
もちろん大腿骨頭壊死症や骨折など、そのほかの疾患も鑑別も重要ですが、MRIで除外できてしまう疾患が多い反面、炎症性疾患は採血をしないと気づかないことも多いため注意しています。
まとめ
FAIの画像診断についてお話ししました。今回も専門的な内容になってしまいました。
今後は患者さんにもわかるような内容でまたFAIについて発信したいと思いますのでよろしくお願いいたします!
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