FAIを放置すると将来人工関節が必要になる?

FAI

FAIという病気について

FAIという病気は股関節における大腿骨と骨盤がぶつかって痛みを起こす病気です。原因としては成長期に大腿骨に過剰な骨が出現し、大腿骨が通常よりも大きくなった結果、骨盤の骨とぶつかるという現象が起こります。男性に多い疾患ですが、女性に起こることもあります。FAIではあるけど症状がない人もいます。しかし症状がある方は、

  • 股関節痛
  • 可動域制限
  • クリック音やひっかかり

といった症状がおこります。一番多いのは痛みであり、股関節の前方に痛みが出ることが多いですが、後ろのお尻側や外側に痛みがでることもあります。

治療にはFAIに特化したリハビリテーションや痛みに対する治療をまず行います。どのようなリハビリをしたらよいかは後日まとめようと思います。

こういった治療を行っても症状が改善しない場合は股関節鏡による治療を行います。股関節鏡という5mmくらいのカメラを股関節内に入れて、余分な骨をけずったり痛みが出ている部位をぬったりします。

放っておくとどうなる?

このFAIですが放置すると将来的に股関節が変形し軟骨がすりへっていく変形性股関節症へ進行していくと考えられています。

これまで日本では形成不全といい、股関節の中に大腿骨がきっちりはまりこんでいない状態の方が変形性股関節症へ進行していくと考えられていました。しかし欧米ではFAIのために変形性股関節症になる人が多く、日本でも近年増加しているのではないかと考えられています。

変形性股関節症になると痛みが強くなり、将来的に人工股関節置換術を受ける方が多いです。そのためFAIの状態を早期に治療することで予防できないかどうかということが期待されています。

股関節鏡治療は変形性股関節症を予防できる?

股関節鏡手術がFAIによる変形性股関節症への進行を予防できるかどうかを調べることはとてもむずかしく、股関節鏡を行った人と行っていない人を公平な方法で比較しなければなりません。しかし近年アメリカのHospital for Special Surgeryから、片側のみの股関節鏡手術を受けた患者の術後10年以上の経過が報告されました。

  • 平均12年の追跡調査で、股関節鏡手術を受けた股関節の変形性関節症(OA)の進行率は28%、非手術側は48%だった。
  • 手術によりOAの進行リスクが42%低減した。
  • 股関節鏡手術は、FAISの治療において関節保存効果があり、OA進行を抑制する有効な手段である。Ramkumar PN, Olsen RJ, Shaikh HJF, Nawabi DH, Kelly BT. Modern Hip Arthroscopy for FAIS May Delay the Natural History of Osteoarthritis in 25% of Patients: A 12-Year Follow-up Analysis. Am J Sports Med. 2024 Apr;52(5):1137-1143. doi: 10.1177/03635465241232154. Epub 2024 Mar 8. PMID: 38459690.

この結果は股関節鏡手術に変形性股関節症への予防効果があることを後押しする内容であると思います。

まとめ

FAIは変形性股関節症のリスクとなります。

股関節鏡手術による治療はそれを予防することが期待されています。

北陸股関節外科医

北陸の整形外科医であり股関節を専門にしています。股関節鏡治療、人工関節治療を得意としています。学位取得後にイギリスに留学し最先端の股関節温存治療を学んできました。
・医学博士
・日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
・人工関節認定医

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