
人工関節置換術を受けるならロボットでの手術ができる病院がいい、そう思っていませんか?
近年、といってももうだいぶたちますが整形外科の領域でもロボット手術はひろまっています。今回はこのロボットが人工股関節置換術のなかでどのようなことをするのか、メリットがあるのかをお話ししたいと思います。
ロボットの役割
ロボット手術と言っても、ロボットが1から10まで全ての仕事をするわけではありません。イメージとしては10ある手術の工程のうち9は人間が行い、残りの1をロボットにしてもらうという感じです。
しかし、その残りの1が手術においてとても重要な部分になります。
ここで患者さんが手術に求めるものはなにかを考えたいと思います。
そんなもの病気が無事に治ることに決まっているだろう、そう思われる方もおられると思います。しかし、病気が治ると手術がうまくいくは医療の世界では完全に同義ではありません。手術がうまくいってもその後のリハビリの経過などをみてみないと病気がよくなったか、本当に手術が成功したのかは分からないからです。
話をもどしますが、手術の技術がよくなってきた現代においてほぼすべての手術がうまくいくと仮定した場合、患者さんの求めるものには
- 傷の小ささ
- 手術が早く終わること
- 術後に痛くないこと
などが挙げられるのではないかと思います。
残念ながらロボットはこれらのことを解決はできません。
ではロボットができることは何かというと
インプラントを正確に入れることができる。
これだけです。ロボットに過度の期待を抱いていた方には申し訳ありません。
しかしながら、このインプラントを正確に入れるということが私たち股関節外科医にとって、傷の大きさや、手術時間、術後の痛みなどよりもはるかに大事なことなのです。
もちろん外科医によって考えが違いますので、中には正確さよりも手術時間や傷の大きさを重視する医師もいると思います。
しかしインプラントを正確に、きれいに設置するということはある程度の医療の質を担保する上で必要不可欠なことなのです。
メリット
インプラントを正確に入れることができると次のメリットがあります。
- 脱臼しにくくなる
- 術後に動作制限をしなくてよくなる。
- インプラントが長持ちする(かもしれない)
インプラントの位置や角度が術後の脱臼に影響してきます。ロボットを用いると1度1mm刻みで位置や角度を決めることができるため理論上は脱臼しにくくなると言えます。
脱臼しにくくなることが理論で分かると、患者さんにこんな動作はしないでくださいと言わなくてよくなります。科学的な根拠をもって好きに動いていいですよということができます。
インプラントが長持ちするかどうかは分かりません。まだ長期的な成績が出ていないからです。しかし悪いインプラントの設置はインプラントが長持ちしない原因となるため長持ちするかもしれません。
ロボット手術はしたほうがいいということ?
さてここまで書いて、この人はロボットを勧めているんだ、と思われたかもしれません。
実はそんなことはありません。ロボットは上手に使えば便利な道具ではありますが、ロボットがロボットを使わない手術に比べて明らかにいい結果であった、という結論づけるのはまだ早いと思います。
ロボットが商業的なアピールとして用いられている風潮もあるかと思います。
私の考えとしては、手術を受けると決めた病院にロボットがあればロボット手術を受ければよいですが、ロボットを使用している病院でなくてはらなない、ということはないと思います。
私自身今は膝の手術でロボットを使っていますが股関節は使用していません。過去にはナビゲーションというロボットのような道具を使っていました。どちらでも問題なく手術ができていると感じています。
まとめ
ロボット手術の是非についてお話ししました。
少しでもこれから手術を考えている方の参考になれば幸いです。
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