FAIで股関節鏡手術をした方がいい人は?

FAI

FAIに対するリハビリの効果

FAIは原則的にはまずリハビリによる治療を行います。

リハビリ治療でも約80%以上の方が改善し、手術を回避しているという報告もあります。

Pennock AT, Bomar JD, Johnson KP, Randich K, Upasani VV. Nonoperative Management of Femoroacetabular Impingement: A Prospective Study. Am J Sports Med. 2018 Dec;46(14):3415-3422. doi: 10.1177/0363546518804805. Epub 2018 Nov 6. PMID: 30398893.

患者さんに合わせた体幹訓練や骨盤の可動性をだすことによって、大腿骨と骨盤の衝突が理論上少なくなると考えられています。

小林先生らのグループから骨盤の前傾が減少することは大腿骨のCAMを削ることと同等の効果が得られていると報告されています。

Kobayashi N, Higashihira S, Kitayama H, Kamono E, Yukizawa Y, Oishi T, Takagawa S, Honda H, Choe H, Inaba Y. Effect of Decreasing the Anterior Pelvic Tilt on Range of Motion in Femoroacetabular Impingement: A Computer-Simulation Study. Orthop J Sports Med. 2021 Apr 20;9(4):2325967121999464. doi: 10.1177/2325967121999464. PMID: 33959669; PMCID: PMC8060763.

このようにFAIに対するリハビリ治療は理論に裏付けられておりとても有効であることが分かります。

股関節鏡をすべき人とは?

リハビリが効果的な治療である一方、症状がなかなか改善しない人ももちろんいます。

そのような人は漫然とリハビリを続けても改善が見込まれないため股関節鏡治療が勧められます。

そもそも最初にどういった人がよくならないのかが分かれば治療がよりスムーズになります。

日本の齊藤先生らのグループから非常に興味深い論文が報告されています。

「カム型大腿寛骨臼インピンジメント症候群(FAIS)の患者において、理学療法は必ずしも成功せず、大腿骨前捻角が16°未満でα角が65°を超える場合、股関節の可動域(ROM)が不十分になる可能性がある」

Saito M, Kobayashi N, Honda H, Kamono E, Yukizawa Y, Choe H, Ike H, Kumagai K, Inaba Y. Physical Therapy May Not Be Successful for Patients With Cam-Type Femoroacetabular Impingement Syndrome and May Result in Insufficient Hip Range of Motion When Femoral Anteversion Is Less Than 16° and α-Angle Is Greater Than 65°. Arthroscopy. 2024 Mar;40(3):766-776.e1. doi: 10.1016/j.arthro.2023.07.012. Epub 2023 Jul 20. PMID: 37479152.

これは平たく言うと、大腿骨の出っ張りが大きく、前捻角が小さい人は早期に手術を考慮した方がいいかもしれない、ということになります。

リハビリによって骨盤の可動性はよくなると予想されますが、骨の形はかわらないため、骨のでっぱりが大きい人や前捻角が小さい人はリハビリだけではよくならない可能性が高い、ということになります。

もちろん、すべての患者さんにリハビリをトライすることは当然ですが、いたずらに手術を遅らせることもよくないことも事実です。

大事なことは、理学療法士と医師が綿密にコミュニケーションをとって治療にあたることができる環境づくりではないかと思います。

まとめ

股関節鏡手術を受けたほうがいい人について最近の論文を紹介させて頂きました。

また引き続き股関節の病気や手術の知見をお話させて頂きます。

最後まで読んで頂き大変ありがとうございます!

北陸股関節外科医

北陸の整形外科医であり股関節を専門にしています。股関節鏡治療、人工関節治療を得意としています。学位取得後にイギリスに留学し最先端の股関節温存治療を学んできました。
・医学博士
・日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
・人工関節認定医

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